大正時代からの伝統を活かして 【株式会社 田中工務店】

株式会社田中工務店 田中重代さん

今回は大船駅~北鎌倉間の電車から、すっかりお馴染みの看板、小袋谷の株式会社 田中工務店さんです。

5年前に4代目社長を就任した代表取締役 田中重代さんにお話しを伺いました。

その歴史はなんと大正時代から!鎌倉で個人で仕事を始めてから91年目を迎えたとのこと。

突然の出来事により、急遽就任した田中さん。

小柄で品性のある雰囲気とは対照的な、大きな波を超えて来ています。

田中工務店さんの歴史はもちろん、一人の主婦だった田中さんの就任までの道のり、これからの思いを語っていただきました。

 

創 業

株式会社 田中工務店 代表取締役 田中重代氏

こまさ:田中さん、今日はよろしくお願いします。早速ですが、田中工務店さんは創業はいつになるのでしょうか?

田中社長:こちらこそよろしくお願いします。

創業は、聞いた話なのですが、大正12年からとのことです。

新潟県出身の田中長八が大工の修行を重ねていたところに関東大震災があり、住宅復興のため、大工道具一つで鎌倉に来たとのことなんです。

こまさ: それはすごい歴史ですね!住宅専門だったのでしょうか?

田中社長:いえ、はっきりとした線引きはしていなかったようです。

鎌倉は寺社も多いですし、その時の依頼内容に柔軟に対応していたようですね。

JR横須賀線から見える看板!お馴染みの景色ですね^^

その姿勢は、今の田中工務店も同じなんですよ。

初代が鎌倉に根をおろし、昭和5年から個人で仕事を引き受けるようになったので、あと9年で100周年を迎える予定なんです。

大船建築組合の創設者でもあり、とにかく鎌倉のために働きかけていたようですね。

 

三代目の急逝

木材と畳のいぐさの香りがしてきそうな和室!

こまさ:すごい歴史ですね!

では、田中さんが社長に就任したきっかけを教えてください。

田中社長:みなさんご存じのように、5年前の3月14日、主人(三代目)は現場を見に行くと言ったきり、戻らぬ人になってしまったんです

心筋梗塞でした。車の運転中に発作が起きたようで、警察から電話があったときはまだ事態がよくわかりませんでした。

前日にもゴルフに行ってましたし、翌日も予定を入れていたんです。

不幸中の幸いで、車の減速中の発作だったため、誰かにケガをさせたり、何かを壊してしまうことはなかったんですが、本当に驚きました。

こまさ:はい、覚えています。

あまりに突然のことでした。近所でお見掛けしていたり、元気なお姿しか思い出せません。

田中社長:そうですね、本人が一番ビックリしていると思います。

私も警察からの知らせを、事故でケガをしたのかと思ったのですが、病院に駆け付けた時にはすでに蘇生処置を受けていました。

 

突然の4代目就任

こまさ:急なことで、慌てたのではないですか?

田中社長:そうなんです。これから息子に事業を引き継いでもらうところだったので、準備などはできていませんでした。

それまでの私は、入出金の管理や書類作成をしていましたが、大きなお金の動きは社長に任せで、小切手などは扱ったことがなかったんです。

主人の口座は凍結されてしまい、3月だったので納税のための資金も主人の口座にあったんです。

お金はあるのに払うことができない、というもどかしさを感じていました。

吹き抜けの天井に大きな梁が引き立ちます。

こまさ:大変な状況をどのように超えられたのですか?

田中社長:主人との出会いは、主人がJC(鎌倉青年会議所)の会員で、私は茶道裏千家淡交会青年部でした。

そこからのご縁で、JC繋がりのたくさんの方たちが助けてくださったんです。

代表者変更から葬儀の手配、声掛けなどみなさんの手助けがあったから乗り越えられました。

その裏で、昔から主人を慕ってくれた番頭さんを筆頭に、息子はもちろん、娘も勤務先を退職して手伝ってくれたり、職人さんたちも頼りになりました。

田中社長のデスク後方には先代のお写真が・・

本当にみなさんにはお世話になりました。

こまさ:感謝の気持ちであふれていらっしゃいますね。先代と重代社長のお人柄あってこそです!

 

 

 

田中工務店は元気だと伝えたい

田中社長:突然私が社長になったことで、手助けしてくださった方や取引先、そしてお客様に心配かけさせたくなかったんです。

田中工務店は元気です!って伝えたくて、先代が引き受けていた各方面の役員も、引き継がせていただきました。

慣れないことばかりでしたが、皆さんが温かく見守ってくださり、お付き合いは変わらず続いているので感謝しているんです。

こまさ:代替わりすると、お付き合いが変わってしまうところも多い中、素晴らしいと思います!

事務所内には多くの感謝状や表彰状が並びます

工務店さんとして意識されていることはありますか?

田中社長:家って3回購入しないと満足しないと言われています。

でも、そういうわけにもいきません。

1回の購入で、できる限りお客様のご希望を満たすのが私たちの仕事です。

だからこそ、大手の住宅メーカーのように決められた商品の中から選ぶのではなく、私たちは柔軟に工法を変えています。

洋風建築、和風建築、木造、鉄骨など、お客様が工務店にあわせるのではなく、工務店がお客様にあわせるのです。

弊社には腕のいい職人がおります。

住宅以外にも寺社や市からの依頼も引き受けており、規模は関係ありません。

様々なニーズに対応できるのが私たちの最大の強みです。

こまさ:頼りになりますね!それでは最後に読者のみなさんに一言お願いします。

田中社長:弊社では初代から鎌倉のみなさんに寄り添ってきました。

これからも変わることなく事業を続けてまいります。家のことでお悩みの方、いつでもご相談ください。

小林さん、今日はありがとうございました!これからもよろしくね。

こまさ:こちらこそありがとうございました。長いお付き合いをお願いいたします!

 

 

 

インタビューを終えて

田中社長のお話はいかがでしたか?

先代を亡くされて、一主婦から社長になったお話は、驚きの連続です。

また、同時に先代への思いが熱く伝わってきました。

現在はご子息の良太郎さんが、職人さんと一緒に現場でのお仕事を支えています。

鎌倉でのお仕事に誇りをもっていらっしゃる田中工務店さん。

鎌倉に根付くという初代の思いは現在も引き継がれています。

これからも田中さんのご活躍を応援しています!頑張ってください!