特別インタビュー 【能登半島震災被災者 坂口竜吉さん】

石川県輪島市 のと吉 代表 坂口竜吉さん

 

今回は特別インタビューを取り上げます。

2024年の元旦に起きた能登半島震災の被災者である料理人の坂口竜吉さんからお話を伺っています。

2024年は能登にとって大きな打撃を受けた年でした。

震災だけでなく9月には豪雨による被害をうけ、復興に向けて動いていた能登にさらなるダメージを与えました。

そんな中、北鎌倉で能登の食材を使ったランチのイベントがあり、そこで腕を振るっていたのが坂口さん。

これもご縁の一つと思い急遽インタビューをお願いしたところ、快く引き受けていただきました。

ランチのイベントでは坂口さんが来場者一人一人に丁寧な挨拶をしていました。

中には能登にはせる思いで涙を流す来場者の方も。

いつもとは違うインタビュー、是非お目通しください。

能登での飲食店経営と料理への想い

北鎌倉での能登のランチで出された一品。本当に美味しかったです。

こまさ:今日はよろしくお願いします。まず、坂口さんは能登でお店をされていたと伺いましたが、どんなお店だったのですか?

坂口さん:よろしくお願いします。輪島市で平成元年にオープンしました。和食をベースにしたお店で、日本料理とは少し違う要素を取り入れたスタイルでしたね。

震災に遭う前の「のと吉」さんのお店。とても広く素敵なお店でした。

こまさ:違う要素とはどのようなイメージですか?

坂口さん:料亭や割烹のような形式ばったものではなく、地元の素材を活かす料理法であればイタリアンやフレンチなども取り入れるという僕が作りたいと思うものを提供していました。特にコロナ禍をきっかけに、提供する料理の一皿一皿に、自分の想いを込めて意味を持たせる方向に変えました。

こまさ:具体的にはどんな「想い」を込めているんですか?

坂口さん:料理を通して、能登の風土や空気感、そして地元の食材の力強さを伝えたいと思っています。それは単に「美味しい」だけではなく、食べた人が何か感じ取れるものにしたいんです。お皿の上に、僕自身の感謝や思いやりを乗せて届ける。だから、一皿作るたびに「この料理が誰かの心に届くように」と思いながら仕上げています。

震災がもたらした試練

地震直後の住居兼お店の様子。

こまさ:震災でお店が大きな被害を受けたと聞きました。そのときのことを教えてください。

坂口さん:お店も住居も崩壊しました。食器棚の一部が無事だったので、大切なものだけは取り出しましたが、それ以外は瓦礫と一緒に処分せざるを得ませんでした。最初は「どうしてこんなことに」と途方に暮れましたが、何よりも家族が無事だったことが本当に救いでした。

こまさ:その後、どのように過ごされてきましたか?

坂口さん:多くの支援がありました。ボランティアの方々が倒壊した家から大切なものを取り出してくれたり、炊き出しをしてくれる方がいたり。本当に多くの方々に助けられました。その時に感じたのは、「人ってこんなに優しいんだ」ということでした。

わずかに残っていた食器もすべてを保管しておくことはできなかったそうです。

こまさ:支援が心の支えになったんですね。

坂口さん:そうですね。「ありがとう」と伝えることしかできない自分がもどかしくもありました。でも、彼らは「それでいいんだよ」と笑顔で言ってくれる。その言葉がどれだけ救いになったか分かりません。震災前から「ありがとう」という言葉を使っていましたが、あの時ほど心の底から感じた「ありがとう」はありませんでした。

炊き出しには被災された方たちも協力して命をつないでいました。

こまさ:支援してくださる皆さんは能登が元気になればそれが一番嬉しいと思います。ところで被災地では復興のスピードに個人差があると聞きますが。

坂口さん:そうなんです。復興に向けて前に進んでいる人と、なかなか進めない人がいるのが現実です。ただ、僕たちはそのことを忘れてはいけないと思うんです。直接助けることは難しいかもしれませんが、「今も苦しんでいる人がいる」という事実を心に留めておくことが大切だと感じます。

9月の豪雨のあと。土砂が周りを覆っています。

こまさ:その中で、坂口さんが心がけていることはありますか?

坂口さん:支援してくれた人々への感謝を忘れずに、料理を通して恩返しをしていきたいと思っています。震災がなければ出会えなかった方々がたくさんいます。その出会いを無駄にしないためにも、これからも料理に思いやりと感謝を込めていきたいです。

支援への感謝を料理に込めて

ボランティアのみなさんと。現地に向かう方々には尊敬しかありません。

こまさ:支援を受けたことで、坂口さんの気持ちに変化はありましたか?

坂口さん:大きく変わりました。僕が料理に込める感謝や思いやりが、より深くなったと思います。震災後、イベントで料理を提供する際も、「支援してくれた人々へのお返し」のつもりで、一皿一皿に気持ちを込めました。ただの食事ではなく、「この料理で少しでも感謝を伝えられたら」と思っているので仕込みの段階から「ありがとう」を意識しています。

イベントでは能登を心配されている方たちが来場し、坂口さんの話に耳を傾けます。

こまさ:お店の再建についてはどうお考えですか?

坂口さん:仮設店舗の計画はありますが、まだ先の話です。ただ、僕は地元の食材を活かした料理を作りたいので、やはり能登で再開したいですね

坂口さんが見つめる未来

こまさ:震災を経て、坂口さんの価値観にはどんな変化がありましたか?

坂口さん:震災がなければ、ボランティアの方々との出会いや、こうしてお話を聞いてもらう機会もなかった。

それだけに、この出来事には意味があったのだと思っています。震災は大きな転機になったのは間違いありません。

こまさ:では最後に、読者の方にメッセージをお願いします。

坂口さん:まずは支援してくださったみなさんありがとうございます。みなさんのおかげで、僕たちはここまで来ることができました。その感謝の気持ちを忘れずに、これからも料理を通じて思いを伝えていきたいと思います。

インタビューを終えて

今回、この3ページでは納めきれない大切なお話をたくさん聞かせていただきました。

被災地の現状、イベントでのトラブルなど深刻で歯がゆい話もたくさんあります。

どこか他人事のように思えていた震災を被災された坂口さんの話を聞くことでとても身近なこととして捉えることができました。

電車や車で数時間移動すればそこは被災地。

1日も早く復興してほしい。そう思えた貴重な時間でした。

坂口さんのお店が再建されたら必ず行くと決め、今こうしてみなさんに被災者の声が届けられたらうれしいです。

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